自給率30%時代の国産材原木流通
広域集荷体制とその限界
2015年の木材自給率は33.3%で、前年の31.2%に引き続き30%台を維持した。2000年から5年間20%を下回っていたが、05年以降は20%台で上昇を続け、今後日本の木材業界は約30年ぶりに自給率30%時代に入ることが確定した。自給率上昇の要因は、輸入材が減少する一方、国産材の供給が増加したためで、15年の国産材供給は2,506万㎥で、1994年以来21年年ぶりの2,500万㎥台となった。自給率が18.8%で最低水準となった02年は、国産材供給も直近で最も少ない1,692万㎥だったが、13年間で約800万㎥増加し自給率を押し上げた。
自給率が1上昇し、国産材供給が約800万㎥増える過程で、国産材原木の利用側である工場と供給側である素材生産現場には大きな変化が生じた。利用側の変化は、国産材製材工場の大型化や合板、集成材工場の輸入材から国産材への切り替え、つまり国産材の大口ユーザーの誕生である。供給側の変化は高性能林業機械の導入と路網整備による素材生産能力の拡大、さらに搬出間伐促進に対する補助の拡大である。利用側と供給側のこうした変化に伴い、2つを結ぶ国産丸太の流通も、広域化と山から工場への直送販売、そして新たな担い手の台頭という変化が起こってきた。
木材自給率30%時代の国産丸太流通の新たな主役は誰なのか。それは素材生産業者や森林組合、工場の素材生産班、国有林のシステム販売、住友林業フォレストサービスや物林に代表される丸太卸売りの原木商社などが担い手として行っている、市場を通さずに山から工場へ直接販売する、いわゆる直送だ。02年から13年間で約800万㎥増えた国産材供給は、大半が国産丸太の大口ユーザーのもとへ直送によって供給されている。
大口ユーザーのなかでも合板工場の丸太集荷は特に広範囲で、宮城や石川、京都、鳥取、島根など自県の素材生産量が比較的少ない県や競合の多いエリアにその傾向が強く見られる。
広範囲から丸太を集めている理由は大きく2つあり、1つはとにかく工場稼働に必要な量を集めるためで、もう1つは産地が限られた特定の樹種を必要とする場合だ。この特定の樹種とはカラ松(道産、内地産含む)で、まとまった量を供給できる地域は北海道、岩手、長野、山梨等に限定される。
国産丸太の広域集荷網が確立する一方で、その流通形態が今後変わる兆しも出てきた。その変化を象徴的に示しているのが、岐阜の森の合板協同組合や岩手の北上プライウッド。山間の素材生産現場近くに新工場を造ったという事実は、合板については輸入材から国産材への原料シフトが完全に定着したことがうかがえる。しかしそれと同時に、丸太の広域集荷に限界が見え始めてきたという可能性も指摘できる。この可能性は、佐賀に九州全域から丸太を集めて製材するプランを実行した中国木材が、その後15年には九州有数の素材生産地に近い日向市で大型工場を稼働させたことや、国産材最大手クラスの協和木材が、競合相手の少ない山形で来春新しい国産材集成材工場を稼働させることからも見て取れる。
最近の事例でいえば、バイオマス発電燃料向けのチップ工場の増加も、半製品ではないが丸太流通から一歩踏み出した広域集荷といえる。バイオマス発電施設にはチップ工場が隣接し、土場には広域から集められた丸太が積み上がっている。だが、素材生産現場に近い場所でチップ化し発電施設へ輸送すれば搬送効率は格段に良くなり、燃料集荷のコスト低減にもつながる。今後発電施設が増加し、燃料用丸太の集荷競合が激化してくると、丸太の仕入れ価格が上がる可能性もあり、その際輸送コストの低減は一層重要となってくる。
各地の国産材丸太の流通変化をレポートした。
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