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 No.2045号

2015年回顧㊦キーワードで振り返るこの1年

忍び寄る消費税増税後の不況を見越す
海外事業強化や非住宅建築に期待

今年の新設住宅着工戸数は10月までの統計から推測すると、90万戸前後まで増えそうな気配だ。昨年が88万戸だったため、今年は小幅増加に転じる可能性が出てきた。ただ、夏場までは需要不足で建築関連資材の荷動きに活気がなく、プレカット工場の稼働率も低迷を余儀なくされた。忙しさが出てきたのは秋口からだが、現在のプレカット工場は大手から中堅までフル操業となっており、少なくとも年度末まで現在の忙しさが続く見込みと指摘されている。大手のなかには再来年の消費増税の駆け込みで、来年いっぱいまで強気見通しを立てているところさえある。

 中・長期的な展望に立つと、新設住宅着工戸数の減少傾向が避けられそうになく、今年も新たな市場開拓のために海外事業に着手する動きは続いた。住宅関連では住友林業が豪州で分譲事業を開始したほか、大和ハウス工業や野村不動産などもベトナムで事業を始めた。一時の中国への進出一辺倒が過ぎ去り、アジア・オセアニア圏で広く市場開拓に取り組む動きになっている。

 中国経済は成長鈍化による景気低迷が鮮明になった。年央の株価急落は世界市場に瞬く間に波及したほか、その後に中国政府が矢継ぎ早に打ち出した株価対策が一層市場不信感を煽る形になった。いったんは終息した中国株下落だが、年末の米国利上げや欧州景気の腰折れ感など不透明要因を引き続き形成している。

中国の成長鈍化は原油や鉄鉱石等の基礎資材の消費を鈍らせただけでなく、木材関連の需給不均衡を呼び込んだ。昨年後半から木材消化ピッチが鈍かったが、年明け後も木材産地国からの供給圧力が弱まらず、5月ごろには沿岸部丸太在庫は450万㎥程度まで膨れ上がった。主要産地の木材価格が下落し、NZ産丸太は秋口まで下落一途となった。

円安定着と実需不振で日本の木材輸入量は丸太、製材ともに前年割れを強いられている。端的には内外産合板比率で、近年は輸入合板が6割近くを占めてきたが、輸入品の減少で国産と拮抗してきた。また、今年は貿易面でTPP(環太平洋経済連携協定)が基本合意にこぎ着けた。ウルグアイ・ラウンド合意(1993年)で林産物関税は既に低率だが、TPP発効により合板等の関税さえ無税(救済事項を設定)になる。

 国内に目を転じると、今年も災害が頻発した。8月下旬の台風15号では九州地区に山腹被害等を引き起こし、9月の関東・東北豪雨では河川決壊で浸水等の住宅被害を生んだ。人災ともいえる問題は大型マンション傾きによる杭施工データの改ざんで、旭化成建材が手掛けた物件はマンションにとどまらず小学校などの公共施設にまで及んだ。次から次へと明るみになる不正に消費者の不信感が増幅されており、マンション需要全体に水を差す事態にも発展している。

 2015年をキーワードで振り返った。

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