稼働済みバイオマス発電所の今
燃料確保し安定運用が課題
2012年7月に施行したFIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)は今年で4年目に突入した。FIT施行前後から全国各地で太陽光発電の設置が相次いだが、木質バイオマス発電所の新設計画も立て続けに明らかになり、現在に至っても新規事業計画は水面下で数多く検討されている。既に一部の発電所は稼働を始めており、当初の事業計画から発電出力や使用燃料の変更を余儀なくされたケースがあったり、次の発電計画に着手したりと事業者によって状況は様々だ。
資源エネルギー庁が発表している木質バイオマス発電所の新設認定数は、今年7月末時点で計119件に上っている。
林野庁は14年木材需給表で燃料用の項目を新たに加えた。これによると、燃料用材(丸太換算)の国内消費量(既設、FIT含む)は192万3,000㎥(国内生産が170万3,000㎥、輸入22万㎥)。輸入が消費量の11%を占め、内訳はチップ(丸太換算)で9万6,000㎥、木質ペレット(同)で12万4,000㎥と推計される。仮に上記国内消費量が全量針葉樹の全乾チップとすると約87万4,000BD㌧(1BD㌧=2.2㎥)に上る。いずれにしても今回が燃料用材の初の公表値であり、今後の統計で需給推移や消費規模の参考になる。
我が国の新設発電所の稼働はいまだ限定的だが、木質バイオマス発電が増加してきたことであらゆる方面に新しい変化が出てきた。
まずは想定どおりだが、燃料用需要の顕在化は目を見張るものがある。発電所稼働及び稼働準備によって国産材C~D材という下級材需要が一挙に増加し、今後さらに増加していく見込みだ。価格も、FIT施行前はC材で3,000円(生㌧)台が珍しくなかったが、今では一部地域以外で見られなくなった。
価格とともに数量確保も難航しており、先行して稼働した発電所のなかでも事前計画と実際の燃料調達で状況が異なり、急遽、輸入材(PKS等)を取り込んで稼働率を安定化させているところもある。PKS輸入量は右肩上がりであり、今年1~9月期で約27万㌧と3年前から約11倍に急増している。
稼働する発電所がさらに増えてくると、燃料の数量とともに品質問題を巻き起こすことは必至だ。チップ工場経営者のなかには、チップ品質が今後の発電所稼働率に大きな影響を及ぼすと見ており、未利用材、一般木材、建廃にかかわらず異物(土壌由来、石、重金属等)除去をどう進めるか、安定した品質でどう持続的な供給体制を構築するかに躍起だ。
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