主要海外針葉樹産地を見る 米・加、ロ、NZ・チリ
再編進め、安定供給優先
製品軸に性能重視
2008年9月のリーマン・ショックで主要木材産地は極度の販売不振に陥り丸太や製材品などの供給量を落としたが、その後の中国需要の増大と米国経済の回復基調で足元の木材需給は比較的安定傾向を示している。
リーマン・ショック後のグローバルな針葉樹供給は、米加材輸出量が大幅に回復している。15年の米加産丸太輸出量は09年比でほぼ倍増、製材品に至っては6割以上増加した。ただ、米加産丸太や米国製材品は13年以降、中国向けが息切れし、米国内需に支えられる形で需給を構築している。目下、堅調な米国経済は利上げ時期を探る展開だが、15年住宅着工戸数は前年比11%近く増加の111万戸まで回復した。米国新設住宅着工数は05年に207万戸まで増加していたが、07年ごろから陰りが見え始め、08年末のリーマン・ショックで一気に落ち込んだ経緯がある。
NZ(ニュージーランド)産丸太の年間伐採量は3,000万㎥規模まで拡大した。09年は1,900万㎥水準だったが中国向けの販売量が伸び続け、15年は09年比で6割ほど増やした。NZ丸太は運送や港インフラで丸太供給量が上限近くに達しているが、供給の大部分を占める中国需要が落ち着いたことで丸太価格も狭い価格幅で変動するにとどまっている。
ウクライナ問題で欧米諸国の経済制裁を受けたロシアはルーブル安に直面した。今年2回利下げを断行してインフレ率の引き下げに躍起だが、木材供給面では中国向けに軸足を置いた展開となっている。ロシア政府は07年に丸太輸出税率を20%へ引き上げたが、その後中ロ国境沿いに製材工場が多数林立し、商社筋によると原木換算ならリーマン・ショック前より増加しているとの見方だ。一方、日本市場では丸太輸出増税でロシア製材からの撤退や国産材への樹種転換を強いられたが、今年の丸太輸入量は合板用が増えてきたことで12年ぶりに増加する可能性が出てきた。
リーマン後の需要受け皿となった中国需要はここにきて足踏み状態となっている。昨年から中国経済の減速が指摘されており、経済成長率は既に7%割れ(15年)であるほか、莫大といわれる不良債権が今後どういった形で世界経済へ波及するかが懸念材料となる。
資源需要は確実に調整期へ入った中国だが、木材に関しては丸太で年間5,000万㎥近く、製材品で3,000万㎥ほどの需要国でもある。ただ、丸太輸入は15年が前年割れで調整局面となったが、製材品輸入量は過去最高を記録するなど木材吸引力は引き続き強大だ。
日本需要は米中2大消費国と比べると安定感があるともいえるが、ダイナミックさはない。高度経済成長からバブル経済までは南洋材や米材などの外材輸入量で存在感を高めたが、今となっては新設住宅着工数は年間90万戸台がやっとという需要環境にあるほか、02年ごろからの国産材台頭という自国資源の活用も重なって建築向けで頭打ち感は否めない。
特集では米国・カナダの針葉樹製材、ロシア、NZ、チリの供給動向についてまとめた。
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