森林環境税で、財源確保
国と自治体の住み分けは如何に
日本の森林施業は主に森林所有者の素材生産という経済活動と、国の予算事業の2本柱で行われているが、その他に、自治体が独自課税(いわゆる森林環境税)を導入して行っている森林整備等の事業も年々増えている。最初にこの取り組みを始めたのは高知で03年にスタートし、その後04年に岡山が続いた。05年に西日本で6県が開始したことで注目が高まり、06年に8県、07年に7県、08年に6県が導入し一気に全国へ広がった。その後も着実に増え、現在、37府県で合計約305億6,300万円が森林整備等の財源として確保されている。未導入は北海道、青森、埼玉、千葉、東京、新潟、福井、徳島、香川、沖縄の10都道県だが、このうち埼玉は、自動車税収入額の1.5%相当額を森林の整備や都市緑化に活用する基金(約13億円)を設置している。
森林導入した府県の多くは主に5年間と期限を切った形で導入としているが、今のところ全て期限が切れた時点で更新している。更新時には県民アンケートや有識者による検討が行われ、効果や必要性が認められている。税収の用途は、当然ながら導入の主目的である森林整備に総額の半分から、多いところでは8割ほどが使われている。森林整備は主に人工林の強度間伐(30~50%)を行い針葉樹と広葉樹の混交林へ誘導する施業が多い。基本的に、奥地や保安林、水源林など緊急に手入れを要する林地が選ばれ、所有者負担無しで実施する経費に用いられている。その際、国の間伐補助事業とは重複せず、実施箇所を住み分けている自治体が24府県で、13県は一部で国の補助に県民税を上乗せしている。
森林整備のための独自課税が、これを導入した自治体の林業・木材産業にとって重要な財源として定着するなか、政府が新たに森林整備のための森林環境税(仮)の創設を打ち出したことで、37府県は制度の見直しを必要とする可能性が出てきた。これは、昨年12月に出た2016年度与党税制改正大綱のなかで、森林吸収源対策として、「森林整備等の財源に充てる税制(森林環境税(仮称))等の新たな仕組みを検討する」との文言が盛り込まれたことによるものだ。これが現実化した場合の対策について尋ねたところ、有効回答31件のうち「支援内容に重複が発生しないよう調整を図ったうえで、県の森林環境税は続けていきたい」との前向きな回答が6件あった。しかし一方で、「県の森林環境税は見直し、減額、廃止も含めた検討になる」との答えも4件あり、「同じ目的で国税と県税を徴収することは避けるべき」が2件、「都道府県で徴収し、国でも徴収することに国民の同意がえられるかどうかが課題」との指摘も上がった。
37府県の取り組みを一覧で掲載するとともに今後の方向性を探った。
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