再び駆け込み需要は台頭するか
2017年4月に消費税は10%への引き上げが予定されており、住宅は経過処置として16年9月末までに契約したものは、引き渡しが17年4月以降になっても旧税率8%が適用になる。そのため、16年は再び住宅需要に駆け込みが起こる可能性がある。
2016年の住宅需要を占ううえで注目されるのが、消費税8%から10%への引き上げ前の駆け込み需要。直近の新設住宅着工数は15年10月の数値で、7万7153戸(前年同月比2.5%減)と8カ月ぶりに減少した。持ち家は2万4830戸(同2.4%増)と6カ月連続で前年を上回っており、消費税8%への引き上げ時の駆け込み需要の反動減からは脱したが、住宅需要の回復にはブレーキが掛かっている。消費税10%への引き上げで期待される駆け込み需要はまだ感じられない。
非住宅木造建築物の市場は今後大きく拡大していくことが予測される。RC造(鉄筋コンクリート)、S造(鉄骨造)の建設コストが上がっており、相対的に木造の価格競争力が高まっているからだ。また、木造でも耐火建築物の実績が増えてきており、2015年度は年間800件、16年度には1000件を突破する勢いがある。耐火建築増加の要因として、日本ツーバイフォー建築協会と日本木造住宅産業協会が、取得した大臣認定を一定の条件下で使用できるようにしたことが大きい。これまでは木造で建てられなかった4階建てなど中層建築物の建設が可能になってきた。1時間耐火構造では上の階から数えて4階分を木造にでき、2時間耐火構造では同じく14階までを木造化できる。
梱包の主力である輸出関連需要の低迷が続いている。例年見られる年度末の需要期も末端大手荷主のまとめ買いが影を潜めている。大手荷主は在庫を持たないため夏場の需要増が見られるが、全般需要の波は小さく、年間を通して低調な動きで平準化し始めた。
2015年の国産材原木輸出量は、前年比30%前後増加して全国で60万立方㍍台後半になりそうだ。ただ、15年上半期の時点では前年比4割以上の伸びになり、年間では70万~80万立法㍍の実績が予想されていたことを考えると、下半期は大幅に失速する状況になった。国別内訳では、全体の6割強を占める中国向けが前年比3割増、韓国向けは倍近くに増加したが、台湾向けが減少傾向。14年前では台湾が韓国を上回っていたが、15年は韓国が台湾を大幅に上回ることが確実だ。
国産材原木は消費税導入と引き上げに絡む過去3回の駆け込み需要時の相場の動きを比べると、 回を追うごとに変動幅が大きくなっている。前後1年間の杉柱取り丸太の上昇率は3%の導入時(1989年)が 13.6%高、5%への引き上げ時(97年)が38.9%高、8%への引き上げ時(2014年)が45.5%高、桧4㍍丸太は 順に39。5%高(中目)、41.0%高(土台取り)、47.1%高(同)。時代が下がるごとに相場の変動が大きくなるのは 国産材製品の場合と同様で、大型工場への依存度の高まりが原因と考えられる。
木質バイオマス発電所が複数稼働を開始し、国産材原木輸出が拡大するなど、全国に先駆けて国産材原木の新需要が台頭している九州地域。素材生産業者は需要増を基本的には歓迎しているが、今後、素材供給量全体を順調に増加させることができるかには疑問の声が多い。 まず問題になるのは、住宅需要が縮小していく予想の中で、製材向けなどのA(直)材需要が停滞していることだ。B(小曲がり)材はまだしも、発電、輸出などのC(チップ、大曲がり)材需要ばかり膨らんでも「A材がある程度の価格にならなければ採算が合わず、立木購入、出材を積極化することが難しい」(素材生産業者)。
国産材製材も過去3回の駆け込み需要時の相場の動きを比べると、原木と同様に回を重ねるごとに変動幅が 大きくなる。前後1年間の杉柱角の上昇率は3%の導入時(1989年)が17.0%高、5%への引き上げ時(97年)が27,5%高、8%への 引き上げ時(2014年)が40,0%高、桧土台は導入時が15.0%高、5%時は25.0%高、8%時は66.7%高。流通の中心が1989年、 97年当時のグリン材から2014年はKD材に変わったこと、時代が下がるにつれて需要規模が小さくなる一方、 大型工場の寡占化が進み、急な需給変動への対応力が弱く(増産余力が乏しく)なっていることが要因として挙げられる。 14年時(駆け込み需要は13年後半)の桧KD土台の欠品、暴騰はそれを如実に表しており、今年後半に同じような需要の 台頭が起こるとすれば警戒が必要だ。
全国に先駆けて製材工場の大型化(年間原木消費量で10万立方㍍規模)が進んでいた九州地域だが、消費税増税後の戸建て住宅需要減少を見据え、今後数年で厳しい経営環境、再編淘汰の時代が来ると予想する見方が増えている。発電、輸出など新需要の台頭により原木高、争奪戦が起こることは予想されていた。そのなかでいかに国産材KD製品の安定供給に取り組むかが検討されてきたが新たな時代を予想以上に早く感じさせたのは、中国木材日向工場(宮崎県日向市)の稼働開始だ。
14年秋に稼働を開始した同工場は原木消費量で年間30万立方㍍超の規模を見込み、当初から製材・加工と木質バイオマス発電の融合を計画。山から出てくる原木をすべて受け入れる体制、また製品も輸出まで視野に入れている。来年には集成材工場(杉集成管柱専用)も稼働する。発電収益などを含めた原木調達力、製品競争力は、今後の国産材製品の流通を大きく変えていく可能性がある。
米加材にとって2015年は、今や木材の巨大消費国となった中国の景気後退に振り回された1年となった。 だが、15年第4・四半期から中国市況にはやや底入れの兆しが見え始め、米国市場も大統領選を控えて景気は好調推移 の見通し。日本も消費増税前の駆け込み需要から木材需要が拡大するだろう。そのため16年は、米国、中国、日本とそろって 悪くない引き合いが期待できると予想される。だが、持ち家の伸び悩み、ユーロ安、中国経済の不透明さなど懸念事項も多い。
南洋材丸太の需要量は減少の一途をたどっている。特に2015年前半は円安、産地高、国内市況不振で国内南洋材合板メーカーも生産調整を行い、9月までの15年累計入荷量は前年比21・7%減と大きく減少した。この水準でいけば年間供給量も22万立方㍍前後と過去最低を更新しかねないが、国内の需要さえ回復すればまだ供給余力はあるはずだ。国内南洋材合板メーカーもコスト削減努力を続けている。
2015年夏場にかけラジアタ松丸太に影響を及ぼす中国の景気減速が鮮明になり、併せて中国に輸出を行ってきた周辺諸国の景気減速も目立つものとなった。中国国内主要港の丸太港頭在庫は15年夏場まで400万立方㍍を超え、大幅増となった。しかし、その後は中国国内の出荷が増え、10月末には300万立方㍍を割り込み270万立方㍍とも言われ、急速に在庫調整が進んでいる。
2015年のチリ製材の輸入量は25万立方㍍程度が見込まれている。サプライヤー別(13年10月~14年9月期)では、最大手アラウコが約14万7900立方㍍で輸入量の58%を占め引き続き首位で、次いでCMPCが37%の9万3400万立方㍍、コンソルシオが2%の5400立法㍍、残りがアスンなどとなる。
木質建材分野の供給状況は前回の消費増税に伴う駆け込み需要期と比べ、2014年にパルの関連製造会社パルテック、 住友林業クレストの名古屋、九州工場が閉鎖されるなど、特に建具、造作の生産能力がやや減少気味となっている。
石膏ボード工業会調べによると、直近の消費増税前駆け込み需要が発生した2013年の石膏ボード出荷は約5億1639万平方㍍、翌年は年度をまたぎ秋ごろまで経過措置による需要に恵まれ約5億2696万平方㍍を記録した。その前の駆け込み需要時はどうだったかというと、消費増税前年にあたる1996年が約6億5108万平方㍍、翌年が6億7599万平方㍍まで出荷量が伸び、一時的な欠品が生じる事態に陥った。
窯業系サイディングは、戸建て住宅向けの外壁仕上げで78・3%(2014年)の市場シェアを占める外装材の代表格といえる製品だ。その窯業系サイディングの16年供給状況は、消費増税率10%となる前お駆け込みが大きな需要の山となれば、欠品することも予想される。過去にも97年4月の消費税率5%となった時に窯業系サイディングは石膏ボード、グラスウールとともに大欠品騒動を起こし、14年4月の消費税率8%へ引き上げられた際にも窯業系サイディングは一部の品目やサイズが品薄となり、供給がタイトになった。
キッチン・バス工業会がまとめた国内メーカーの出荷推移によると、1996年度の新築着工数164万戸に対し、キッチンの完成品出荷台数はシステムキッチンが106万7140台、セクショナルキッチンが120万7523台、計227万4663台だった。 これに対し、直近の出荷のピークである2014年の出荷台数は、システムキッチンが129万6台、セクショナルキッチンが48万7110台、計177万7107台。住設メーカーは97年の消費増税以降、新築需要の低迷に伴い生産設備を縮小し、あるいは事業撤退、廃業するメーカーもあった。だが14年の実績を見る限り、96年度実績の80%程度、つまり130万戸分の需要をカバーする生産能力がいまだに残されていることが分かる。
前回(2014年4月)の消費増税前の駆け込み需要の際、断熱材はその3年前の大欠品の経験を生かして生産能力を増強し、在庫を通常以上に積み増し、海外品を輸入するなど万全の備えをしていた。しかし、13年秋口から14年年明けにかけて、グラスウールを中心に品不足が生じた。ほかの建材も納期が遅れていたため断熱材が目立って注目されることはなかったが、20年の省エネ基準義務化に向け、ユーザーに供給不安を残す結果となった。 今回(17年4月)の消費増税前の駆け込み需要は、義務化に向け各メーカーが安定した供給能力をユーザーに示す最後の機会といえる。17年4月以降は、義務化直前の19年まで大きな需要の山場がくるとは、今のところ考えにくいからだ。
2013年後半~14年4月までの消費増税前の駆け込み需要で、プレカット各社は工場をフル回転させる状況 が続いた。各社とも外注に出すなどして対応したが、加工が間に合わない工場もあり、また加工が間に合ったとしても 工場からの加工済みの材を運ぶトラックが確保できず、配送の混乱から納期が遅れが頻発する結果となった。 今年も4月ごろからは消費増税前の駆け込みが始まりそうだが、今回は前回の消費増税から2年しか経っていないことを理由に、前回ほどの混乱は起きないのではとの見方が少なくない。ただし、その時期がきてみないと分からないとの声も多く、大手プレカット会社では、受注の増加を念頭に配送や完成済み在庫の一時保管場所の確保といった対応に動いている。
施工の簡略化は、職人不足がまん延気味にある近年、命題として取り組まれてきた。2013~14年にかけて消費税率が5%から8%に引き上げられた時、駆け込み需要で職人不足が顕著だったため、住宅メーカーや施工会社は次回も職人不足を想定し、施工の簡略化を図っている。 この動きとして14年には益田建設やアサカワホームなどがパネル工法の取り組みを発表した。 それに対し15年は、プレカット後の施工の簡略化が目立った。10年ごろからプレカット工場や足場施工業者などの建て方事業が増えてきたが、ここにきて、運送業や内装工事業による建て方事業への参入が増加している。
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