断熱材
2020年の省エネ基準義務化に備える 2013年6月に閣議決定された日本再興戦略において、住宅・建築物の省エネルギー基準が6年後の2020年までに段階的に義務化していくことが盛り込まれた。これを「規制」ととらえるか、「ビジネスチャンス」ととらえるかで、今後6年の取り組みは大きく変わる。ビジネスチャンスとするなら、義務化水準を超える住宅の省エネ化について、どこまでのレベルを目指すのかを考え、独自の省エネ住宅を作り差別化を始めなければならない。 こうなると設備任せの話になりがちだが、躯体の断熱気密性能を高くすれば、少ない暖冷房エネルギーで快適にすごせる省エネ住宅ができる。断熱材の種類や工法選び、防湿や気密も含め確実に施工するプロセスには、建て方や設計に精通した技術やノウハウが必要で、プロの腕の見せ所といえる。義務化をビジネスチャンスととらえるならば、住宅会社がまず取り組むべきは、断熱材と断熱性能を改めて見直すことだろう。
ノンホルの「アクリア」シリーズを提案
旭ファイバーグラス(東京都、狐塚章社長)の「アクリア」シリーズは、国内で唯一の、ノンホルの高性能グラスウール。繊維が極めて細く高い断熱性能を発揮する点や、ソフトな肌触りが評価されている。 省エネ基準(等級4)対応として推奨している「アクリアネクスト」は、密度14Kながら、通常のグラスウールの24Kや、高性能グラスウール16Kと同じ断熱性能を持つ。アクリアネクスト14K105㍉厚はR値2・8で、省エネ基準よりワンランク上の断熱性能になる。天井も、アクリアマット14K155㍉厚なら1枚でR値4・1と、省エネ基準を満たす以上の断熱性能を得られる。
省エネ基準対応、パッシブハウス作りもサポート
マグ・イゾベール(東京都、フランソワ・ザビエ リエナール社長)は、義務化予定の新しい省エネ基準(等級4)への対応としては、従来どおり「マグ オランジュ」または「マグ スーパーイエロー」を提案している。どちらも極細の繊維を用いた、密度16K相当の高性能グラスウールだ。独自のパッシブハウスであるマルチコンフォートハウス(MCH)の提案を早くから進めており、施工物件も着実に増えてきている。2020年の義務化を念頭に、断熱仕様を一気に引き上げたいというビルダーが、特に昨年から目立って増えてきたと実感している。
ハウスロンからソフールへ、全品目を高性能グラスウール化
パラマウント硝子工業(福島県須賀川市、野崎有社長)は、2020年の省エネ基準義務化への備えとして、全品目を高性能グラスウール化する取り組みを進めている。そのため、住宅用グラスウール「ハウスロン」シリーズを今年9月末で販売終了することを決め、昨年発売した「ソフール」への切り替えを提案している。ソフールは、ガラス繊維を従来よりさらに細く均一にすることで、密度10Kながら16Kに相当する断熱性能を実現したもの。また、これを契機に、より断熱性能の高い「eキューズ」を採用するビルダーも増えてきた。
新ライン稼働で能力約3倍、厚物や長尺など品ぞろえも拡充
ニチアス(東京都、矢野邦彦社長)は、住宅用のロックウール断熱材「ホームマット」シリーズの製造販売を行っている。ホームマットは、断熱性能はもとより、原料が鉱物のため火や熱に強く、省令準耐火構造のファイヤーストップ材として用いることができる。また、密度が30~50㌔㌘/立方㍍と高く、それゆえ遮音性・防音性に優れている。昨年11月に千葉の工場で新ラインが稼動し、生産能力は従来の約3倍になった。さらに、従来より厚手の製品や、長尺サイズも作れるようになった。
施工現場研修を進め、省エネ基準義務化に対応
JFEロックファイバー(岡山県倉敷市、木口満社長)は、住宅用ロックウール断熱材「アムマット」の製造販売を行っている。新しい省エネ基準(等級4)に対応する製品としては、2年前から販売している防湿フィルム付きの天井・壁用断熱材「アムマットプレミアム」を提案している。断熱材・耐水性・耐熱性に優れ、加えて防露性能も強化した製品だ。2020年の省エネ基準義務化に向けて、中・四国・九州方面で断熱材の施行研修、省エネの勉強会を重ねている。職人や大工、設計士を対象に気密性を取るポイント等、施工の説明、提案を行う。「現場を見てもらうことが大事。断熱は見えない空間の効果を理解してもらわないといけない」(JFE担当者)。
透湿性や耐ヘタリ性能にも優れた「ポリエステル健康断熱材」
ポリエステルを原材料とする断熱材製造販売最大手であるエンデバーハウス(大阪市、米田賢一社長)は、2020年の省エネ基準義務化への対応として、断熱性能向上に取り組んでいる。パーフェクトバリアは100%ポリエステルを原材料とした断熱材で、同社の「パーフェクトバリア」はすでに新しい省エネ基準(等級4)に対応しているが、新たに106㍉厚(密度13K)で熱抵抗値R2・7の高性能断熱材の提案を開始した。今後、段階的にパーフェクトバリアの断熱性能全体を引き上げていく。
民間でのリピーターが増加、十津川村森組のOEM生産も拡大
木の繊維(札幌市、工藤政利社長)は木質繊維断熱材「ウッドファイバー」の製造・販売を行っている。基本性能は、密度40Kで、熱伝導率0・038W/m・K、比熱容量2100J/㎏・K/w。主原料が木質繊維のため調湿能力が高く、優れた吸音性を発揮する。木質繊維の原料には、工場のある北海道のカラ松やトド松の間伐材や林地残材を使っている。また、十津川村森林組合(奈良県)の杉端材チップ等を使ったOEM生産も行っている。最近は、公共の木造建築で採用が増えると同時に、民間の住宅でも一度採用した業者が再度使うリピーターが増えている。
スタイロフォームFG発売、床断熱のプレカットも好評
押出発泡ポリスチレン断熱材「スタイロフォーム」シリーズの製造販売を行っているダウ化工(東京都、杉山隆博社長)は、今年1月、断熱性能の最高レベルであるFランク、熱伝導率0・022W/mK以下を実現した、「スタイロフォームFG」を発売した。ゼロエネ住宅などを手がけるユーザーを中心に、徐々に認知を広げている。防蟻性能を持った「スタイロフォームAT」への引き合いも、昨年、大手住宅会社で採用され、さらに認知が広がった。最近取り組み始めた床断熱用のプレカットシステム「ぴたっとカット」も、採用現場が着実に増えている。
スーパーEXでゼロエネ住宅に対応、壁断熱内装パネルでリフォームも提案
化学メーカーのカネカ(大阪市、角倉護社長)は、押出発泡ポリスチレン断熱材「カネライトフォーム」シリーズを製造し、子会社のカネカケンテック(東京都、服部陽一社長)が販売している。カネライトフォームシリーズでは、従来、スーパーE-Ⅲが高性能品の主軸で、省エネ基準(等級4)対応などで需要を伸ばしてきた。さらに、昨年4月に発売した、熱伝導率0・024W/m・Kで、スーパーE-Ⅲより断熱性能が15%向上した「スーパーEX」も、ゼロエネ住宅などを手掛ける住宅会社を中心に、採用が広がってきた。断熱リフォームも、スーパーE-Ⅲと石膏ボードを張り合わせた壁断熱内装パネルなどの提案を、昨年から本格的に進めている。
プレカット納入で工期短縮に貢献
JSP(東京都、塚本耕三社長)は、押出発泡ポリスチレン断熱材「ミラフォーム」シリーズの製造販売を行っている。同社は、熱伝導率0・022W/m・Kの優れた断熱性能を有する「ミラフォームΛ(ラムダ)」を、いち早く製品化し提案を続けてきた。ここ2~3年で断熱性能の高い製品への関心が高まり、類似の製品も増えてきたことで、相乗効果による需要拡大を期待している。最近、特に床の充填断熱で普及してきたプレカット納入も、同社は10年以上前からいち早く取り組んできた。特に昨年は、着工増と大工不足から採用物件が急増した。
EPS防蟻断熱材への注目度が高まる
ダイナガ(大阪市、小原孝之社長)は、発泡ポリスチレン(EPS)断熱材の製造販売の大手で、主力の「スノーフォーム」はさきごろ、JIS認定を取得した。JISを通じ徹底した品質管理体制を構築している。構造用合板等の木質構造用パネル、また非木質構造用パネルとEPS断熱材をサンドイッチとした「DN断熱パネル」なども開発している。現在、最も力を入れているのが、EPS防蟻断熱材「オプティフォーム」で、日本木材保存協会から防蟻処理非木質系製品としての認定も取得した。今年6月には、新たに開発した超難燃防蟻断熱材「オプティレッドフォーム」も本格的に販売を始める。
新工場稼動で生産能力1・8倍に、防耐火取得で付加断熱提案も強化
旭化成建材(東京都、前田富弘社長)が製造販売するフェノールフォーム断熱材「ネオマフォーム」と「ジュピー」は、世界最高レベルの熱伝導率0・020W/m・Kという断熱性能を有し、耐熱性や耐久性にも優れる。今年4月に新工場が本格稼動し、生産能力は従来の約1・8倍になった。省エネ基準以上の高断熱住宅には、充填断熱にネオマフォーム外張りを組み合わせた、「ネオマフォーム外張り付加断熱工法」を提案している。外壁防火耐火構造認定の種類がそろったことで、今後は関東でも提案を進めていく。今年6月には、既存の壁に内側から貼るリフォーム用パネルの提案も始めた。
世界最高水準の断熱性能を誇る「フェノバボード」
積水化学工業(大阪市、根岸修史社長)のフェノールフォーム断熱材「フェノバボード」は、熱伝導率が0・019W/m・kと極めて低く、世界最高水準の断熱性能を長期にわたり有する。また、耐火性能やノンフロンなど全方位的に優れ、幅広い用途に対応できる。床充填用の製品をプレカット加工して納入する物件も、少しずつ増えている。以前から力を入れていたパネル工法での採用も、従来は関東エリアが中心だったが、中部エリアにも広がってきた。さらに。省エネ基準(等級4)対応を軸に、認定低炭素住宅やゼロエネ住宅づくりへの、きめ細かい設計・施工サポートも行っている。
紙の発泡系断熱材フクフォームEco、施工性の良さも好評
フクビ化学工業(福井県福井市、八木誠一郎社長)が製造販売する「フクフォームEco」は、同社が独自に開発した、紙の発泡系断熱材だ。通常廃棄処分される未利用の紙の裁断くずを使った、床用の発泡系断熱材。未利用資源の有効活用という点はもとより、エネルギー消費量の少ない製造過程も、環境配慮の点で評価が高い。長期間の利用でも初期性能が変わらない点も、住宅用に適した特徴の一つだ。充填後に、ボードと一体化した不織布を根太や大引きにタッカーで打ち留めるだけ、という省施工も好評だ。
多様な品ぞろえでニーズに応える、床断熱用の新商品が好評
アキレス(東京都、伊藤守社長)は、ボードタイプと吹き付け工法用の硬質ウレタンフォーム、そしてビーズ法発泡ポリスチレン(EPS)の3種類の断熱材を持ち、その多様性を強みとしてユーザーの様々なニーズに応えている。なかでも主軸はボードタイプの硬質ウレタンフォーム「キューワンボード」。熱伝導率0・021W/m・K(設計値)の高い断熱性能を有し、さらに表面は赤外線を反射する遮熱性能の高いアルミ箔仕上げで、冬の寒さ対策と同時に夏の暑さ対策もPRできる点が特徴。最近、「アキレスジュウテンNL」など、床の充填断熱向けの品ぞろえも強化し、好評を得ている。
13年の施工棟数3万棟規模に、前年比5割増の快進撃続く
現場発泡の硬質ウレタンフォーム断熱材「アクアフォーム」を施工販売する日本アクア(東京都、中村文隆社長)は、昨年、念願の上場を果たした。同社は吹き付け系の断熱材市場でシェア首位を誇り、13年の木造住宅向け販売棟数は3万棟規模に達した。同社で開発した透湿防水シートを使った場合に限り、アクアフォーム直吹きの際の防水性能の10年保証も行っている。熱伝導率が0・021W/m・K以下と、最高ランクの断熱性能を有する「アクアフォームNEO」の販売も開始した。
省エネ基準義務化への対応、ソフト面も準備進める
BASF INOAC ポリウレタン(愛知県新城市、井上雅之社長)は、国内の硬質ウレタンフォーム原液メーカーとして40年以上の歴史を持ち、現場発泡吹き付けの需要を開拓してきた。木造住宅向けには、ノンフロン低密度硬質ウレタンフォーム「フォームライトSL」を提案している。専門業者が専用機械で吹き付けるため気密性に優れ、断熱性能も高い。新しい省エネ基準(等級4)への対応は、従来の次世代省エネ基準の厚みで概ね対応できると見ている。今後は、フォームライトSLに対応した一次エネルギー消費量の計算ツールを提供するなど、ソフト面の支援体制も整えていく予定だ。
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