電子版ログイン

※会員の方はこちらから

1日付新春特集号 キーワードで展望する2017年

 2016年は英国のEU離脱、米国の大統領選でトランプ氏の勝利など大方の予想を覆す出来事が連続した。トランプ大統領の就任は不安定様相が大きく、為替は㌦安に進むとの予想も裏目に出た。グローバル化の終焉、保護貿易主義の回帰は木材、建材業界にも影響が大きそうだ。17年の業界動向をキーワードと木材・建材業界の主要な企業の経営者の見方から探って行きたい。

「超低金利」―住宅―

 歴史的な低金利続く

 2016年の新設住宅着工戸数は15年を上回りそうだ。10月分までの統計を見る限り、95万戸前後(前年比4・5%増)に達してもおかしくない。特に貸家と分譲一戸建てが好調で、どちらも歴史的な低金利が影響していると見られている。ただ、分譲一戸建てといっても供給量は長期的に年間12万戸前後で安定し、貸家に占める木造の比率もそれほど大きく伸びているわけではない。何より肝心の持ち家が前年比微増で、低金利という恩恵を受けても消費増税反動減後の市場環境がいまだに続いているかのような状況だ。

中層化」―非住宅―

 2時間耐火元年に 

 

 今年は2時間耐火構造を活かした木造5階建て以上の中層木造建築物が登場することが期待されている。  木質2時間耐火部材の大臣認定は、シェルターの「クールウッド」が先行し京都木材会館で採用されている。京都木材会館は4階建てなので、本来の2時間耐火の要求性能ではなく、2時間耐火部材を使っての施工にとどまったいた。  日本木造住宅産業協会、日本ツーバイフォー建築協会が進めてきた2時間耐火認定作業もほぼ出そろうことでより広範囲で木質2時間耐火構造による建築が具体化してきそうだ。

 

「国産合板時代」―合板―

 さらなる国産材利用拡大に期待

 

 昨年は1995年以来21年ぶりに国産合板の生産量が合板輸入量を上回った。国内合板メーカーはこの約20年間で国産針葉樹合板による合板生産と需要の拡大に取り組んできた中での内外産比率の逆転はまさに「国産合板時代」の到来と言えよう。今後は人口減少による住宅着工の減少は長期的に進む一方で、昨年5月に改定された森林・林業基本計画で合板分野では2025年までに年間国産材原木消費量を現在の2倍近い600万立方㍍まで引き上げるという目標が打ち出されている。そのため、国内合板メーカー各社では構造用以外の分野での商品開発なども含めて国産針葉樹合板の需要拡大を進めている。

「変わるFIT」―バイオマス―

 改正法が4月施行、導入促進とコスト抑制

 

 2012年7月施行のFIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)は5年目に突入する。木質バイオマス発電は高額買取価格の設定が呼び水になり全国各地で新設発電所の計画が相次いでいる。木質バイオマス発電所のFIT設備認定数(16年7月末時点)は186カ所(総出力=約360万kW、移行分含まず)で、うち稼働済みは49カ所(同約45万kW)と約4分の1にとどまっている。

「環太平洋」―海外市場―

 成長市場への投資拡大

 

木材・建材メーカーや住宅会社にとって2017年も海外市場は、重要な成長市場としての位置付けは変わらない。日本の経済成長が鈍化し、人口減少期を迎える成熟市場へと進むなか、特に成長が著しいインドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム、ミャンマーなどの東南アジア市場を中心に投資拡大への動きが増加しそうだ。

「国際イベント」―森林認証―

 東京五輪とサミットで認知急拡大

 

 海外で誕生した森林認証制度が、2000年に日本へ持ち込まれてから丸16年が経過した。この16年間で、日本の森林、林業、木材・紙パルプ産業において認証取得件数は着実に増え、森林認証製品を供給できる体制は一定程度整った。しかし、森林認証の一般認知はなかなか広がらず、認証製品への需要も増えたとは言いにくい。そんな森林認証にとって、2020東京五輪は需要拡大とブランド形成における最大にして最後のチャンスといえる。

「ZEH」―建材―

 新築の新標準、将来的には最低基準にも

 

 ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)普及に向けた動きが加速してきた。2016年は「ZEH元年」とも言われ、ZEHへの取り組みで先行している大手住宅会社だけでなく、中小工務店のZEHビルダー登録にはじまり、全国で啓蒙活動が相次いで開催された。ZEHは戸建て住宅の新標準であり、将来的には住宅づくりの最低基準となってきそうだ。

「クリーンウッド法」

 5月20日に施行

 

 合法木材の利用を促進する法律(クリーンウッド法)が昨年5月13日に成立し、今年5月20日に施行される。合法木材の法律はこれまでにも何度か制定が試みられてきたが、扱っている材の出所を完全に明らかにするのは難しいという意見が業界に多く、見送られて経緯がある。だが今回は、議員立法となったことであっさり成立した。  同法の最大の特徴は、輸入、販売業者だけでなく、ゼネコン、住宅会社などの最終需要家も対象になることで、これら大手が登録木材関連事業者として登録すれば、これら企業への納材はすべて合法性を証明しなければならなくなる。法自体に強制性はなく罰則もないが、川下を巻き込むことで法の実効性は大きく高まる可能性が高い。これは来年の木材市場を大きく変える可能性をはらんでいる。

記事ランキング

日刊木材新聞社 木造社屋紹介動画