プレカット特集
11年はプレカット企業の工場拡大が目立った年であった。その背景には東日本大震災からの復興需要獲得に加え、大手住宅メーカーが全国展開を一層強めた のに伴い、プレカット工場も大手企業を中心に拡大路線が一層強まったことがある。その一方で、中小工場との間では加工能力の差が拡大している。このような 状況の中で地域型住宅ブランド化推進事業によるグループ化や公共建築物等木材利用促進法の施行などにより中小プレカット間での連携や交流といった新たな動 きも出始めている。
仙台と富士工場を建設、圧倒的な競争力で市場拡大
プレカット最大手のポラテック(埼玉県越谷市、中内晃次郎社長)は、増加するプレカット受注に対応して仙台工場(ポラテック東北)、静岡・富士工場(ポ ラテック富士)の2工場を新設することを決定し、来年1月の稼働に向けて準備を進めている。
6工場駆使し関東に軸足、工場の集約化を視野に
テクノウッドワークス(栃木県鹿沼市、早川孝男社長)は工場大型化と生産コスト低減が基本戦略で、木材価格に左右されない賃加工が売り上げの主力になっ ている。落としたコストで加工賃を引き下げるのではなく、サービス向上につなげる方針で、「顧客視点を重視した工場づくりを続ける」(早川社長)。
高収益路線が軌道に乗る、業務分担へ組織力の強化に注力
シー・エス・ランバー(千葉県東金市、中井千代助社長)は09年に拡大路線から転換した高収益路線が軌道に乗り、月間370~380棟(1万 2000~2500坪)の加工で安定的に利益を出す経営が軌道に乗ってきた。一定以上の量を追わなくなったことで不採算物件が一掃され、組織力の強化で業 務効率も向上。11年11月期の経常利益は前期比30%超増えた。
Rウッド主に多樹種対応、木材商社の仕入れ機能生かす
王子木材緑化(東京都、宮崎治夫社長)は、在来軸組プレカットの製造販売を北海道支店のプレカット工場(北海道苫小牧市)で行なっている。商圏は札幌を 中心に伊達、留萌など。年間受注棟数が30棟前後の地場工務店を主体に、商社経由で住宅メーカー・販売店にも供給している。
インテグラル(茨城県つくば市、柳澤泰男社長)は、住木センターの木造建築物電算プログラム認定を取得した住宅性能診断士「ホームズ君 構造EX ver.3」などの建築関連のコンピュータソフトの開発・販売を行なっている。
地域密着で工務店支援、トータル提案に強み
ハイビック(栃木県小山市、浅原秀則社長)は那須、大里、厚木、渋川、八千代、土浦、浜松の7工場で月産3万5000坪の加工能力を誇る。直需木材市場 とプレカット加工を絡めたビジネスモデルの先駆者で知られ、地域密着の営業で工務店を支援している。
着々と加工能力を増強、各工場で職人による加工対応
江間忠ホールディングス(東京都、伊藤泰彦社長)を中心とする江間忠グループのプレカット事業者は、4工場で月間2万坪規模の加工能力に引き上げる方針 を年初に発表した。すでに東日本の需要を担う江間忠ウッドベース鹿島(茨城県鹿嶋市、北里剛社長)のプレカット工場は加工坪数の増強をしており、蒲郡、羽 島、姫路の各工場でも順次、機械の更新を含めた設備投資を行なっている。
非住宅物件も増加中、総合力高め大工・工務店支援
大型小売店のマルダイ(静岡県富士市、深沢裕一郎社長)はプレカット事業を大工・工務店支援サービスの中核に位置付けており、昨年には品確法に基づく住 宅型式性能認定型式住宅部分等製造者認定を取得して総合的な支援体制を強化した。今年は設計業務の受注対応充実化や、ネットワークを通じた地域型住宅ブラ ンド化事業への取り組みなどを進めていく。
柱材加工専門新工場を建設、生産能力拡充で安定供給追求
スカイ(静岡県磐田市、高橋幸嗣社長)は現在、同社船明拠点(浜松市)で柱材加工専門のプレカット新工場棟の建設を進めており、新設1ラインと既設工場からの移設4ラインを集約する計画だ。
コスト削減に力を入れる、自社製品とセット販売強化
院圧林業(岡山県津山市、竹本哲郎社長)のプレカット工場(津山市)は、競合が一段と激しくなっているため、コスト削減を重視している。昨年後半から、羽柄材加工において時間あたりの生産性の工場を図った。
東金工場の増設を予定、市原工場集約も検討
大三商行(岡山市、大越秀樹社長)のプレカット工場は、東金工場(千葉県東金市)、市原工場(同市原市)と岡山工場(岡山県玉野市)からなる。現在、関 東の2工場の月間加工実績は8000坪ペース。うち、金物工法は4分の1の約2000坪。HS、HSS、テックワンP3に金物対応している。
技術支援や提案力を強化、人材育成にも取り組む
大日本木材防腐(名古屋市、鈴木龍一郎社長)は集成材や防腐木材を供給するメーカー的機能と、木材から建材までを販売する流通商社機能を有している。プ レカット事業では、こうした総合力に加えて技術支援や顧客への提案力などソフト面の充実を図っており、木材流通機能を生かした購買等にも取り組んでいる。
充実の設備と大工の技で、地場の工務店とともに成長を
後藤木材(岐阜市、後藤総一郎社長)は、岐阜県各務原市にプレカット工場があり、現在は月間約4500坪を加工している。顧客は地場の岐阜や愛知、三重、滋賀各県の工務店が大半で、約800社を数える。
間違いのない加工で信頼獲得、中小工務店のサポートに注力
上地木材(名古屋市、上地浩之社長)は、22年にわたってプレカット事業を展開している。直近では、中小工務店や大手ハウスメーカー向けに月間約1000坪の加工を行なっている。
ライン更新と建て方進出計画、職人技術を最大限に生かす
茨城県西プレカット協同組合(茨城県筑西市、平出博理事長)がプレカットラインの入れ替えによる生産拡大と建て方事業への進出を計画している。
独自の金物工法で受注増、建て方渡しも軌道に
金物工法専門プレカットのサンクレテック(千葉県袖ヶ浦市、佐藤彰社長)は、独自の金物工法「ツイステック」の好調な受注を背景に昨年度の加工坪数は前年 度比12~13%増えた。特に年明けから3月まではフル稼働(約5500坪、2シフト+残業)が続き、3月は1000坪近くを外注に回して対応した。
将来は国産材率50%へ、多機能加工充実、金物にも注力
辻井木材(京都市、辻井重社長)は一昨年、舞鶴の木造軸組プレカット設備を一新、宮川工機のMPS-35柱加工機、同MPS-VXM横架材加工機、同 MPS-54特殊加工機などを導入した。昨年2月の本格稼働から1年余を経て習熟度も向上し、順調な生産を続ける。現在は1シフトで月間2000坪強を加 工している。
国産材対応で地域連携、中・大規模木造にも実績
トリスミ集成材(奈良県五條市、貝本富作社長)は、在来軸組と金物工法のプレカットを行い、その月間供給量は5000坪、在来軸組は月間2800坪で地 場の材木店や工務店向けに販売している。金物工法についてはクレテックやテックワン、ハラテックなどに対応、大手ハウスメーカーや一般工務店向けにも出荷 する。
紀州材の家造り推進、工務店支援に取組む
山長商店(和歌山県田辺市、榎本長治社長)は木造軸組プレカット設備を一新し、生産能力の引き上げとともに、省人化を進めた。また、紀州桧による門型フ レームの開発を行うほか、紀州材による家造りをバックアップするため一般消費者向けに情報を発信し、そこで生じる引き合いを工務店につなげる仕組みを構築 している。
市場ニーズ先取りが最大の強み、プレカットとの結びつき一層緊密に
木材保存処理大手のザイエンス(東京都、田中隆行社長)は防腐・防蟻処理構造材を主力とし、直接、間接で全国400社以上の木造軸組プレカット及び2✕4プレカットに製品を販売している。
本社工場に製造、物流を集約。CLTを視野に入れる
愛媛プレカット(愛媛県松山市、鶴居美香子社長)の11年度構造材生産高は5万7000坪(前年度比4%増)となった。同社は6月下旬の完成を目指し、 西垣生木団地内に点在する製造・物流拠点を本社工場に集約する。本社工場隣接地合計約3000坪を買収し、6000坪に拡大したが、ここに複数の上屋棟を 建設、生産設備等の移設や電気式フォークリフトを複数導入し、生産の効率化を図る。
プレカット工場に構造計算、木造耐火に取組む
許容応力度による構造計算を得意とするプレカットメーカーのナカムラ(大阪府箕面市、中村栄樹社長)は、設計能力で差別化するため1級建築士事務所、ジョイントウッドを設立した。
月間供給1万4000坪、地域密着で存在感示す
プレカットメーカーのマツシマ林工(徳島県徳島市、松島章公社長)は、地場の小規模工務店へのプレカット供給を得意とし、「細かく、数多く」の営業体制を整えることで、供給量を維持しようとしてきた。
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