構造用集成材
市場規模255万㎥に成長 構造用集成材の国内生産量は昨年、過去最高となった。生産量は149万3,000㎥(日本集成材工業協同組合調べ)となり、150万㎥に迫る勢いだ。中・小断面は、製品性能が明確で、寸法精度などが安定している。住宅性能の向上とともに市場が拡大し、住宅の高性能化を裏で支えてきた。一方、大断面は国内での生産機能が不可欠になっている。 この特集では、国内外の構造用集成材メーカーの取り組みを紹介する。
売上げ約2割増加
秋田グルーラム(秋田県大館市、佐々木孝蔵社長)は、米松を主体にした大断面メーカーとして大型建築物を中心にニーズに合った大断面を全国に向けて提供している。昨年10月からフル操業の状態で、3月も忙しかった。
国内最大級の圧締装置
齋藤木材工業(長野県小県郡、齋藤廣社長)は、信州カラ松を使った構造用集成材で月産1,000㎥を上げている。内訳は大断面30%、中断面、小断面がともに35%。高い技術力で対価集成材の生産にも取り組んでいる。
公共向けの納入拡大目指す
片桐銘木工業(名古屋市、片桐信介社長)は、主に愛知県愛西市の愛西工場で分譲住宅や公共施設向けの大・中・小断面の構造用集成材を生産している。構造用集成材のJAS認定工場としては県内唯一の存在で、米松、杉、桧、Rウッド、カラ松、米ツガなど8種類で認定を取得。1本から製造・販売する受注生産体制で月間50㎥を製造している。
小・中・大断面トータルに製造
構造用集成材の総合メーカー、銘建工業(岡山県真庭市、中島浩一郎社長)は、小断面・中断面・大断面の生産量で国内トップの生産量を誇る。 最低限の在庫量で欠品を起こさない管理システムを構築しており、ユーザーへの製品の安定供給、安定品質、迅速対応を徹底している。
大断面集成材軸に各種建設
翠豊(岐阜県加茂郡、今井潔志社長)は、大断面構造用集成材を中心とした木材加工と建設業務をはじめ、林業、製材、乾燥、EW材調達など幅広く手がけている。13年度は消費税増税前の駆け込み需要もあって多忙な年となり、特に「商業施設の木造化の加速を実感した」(今井社長)と話している。
ヒバに強いこだわり
加賀木材(石川県金沢市、増江世圭社長)は、能登ヒバを原料とする木製ドアやフローリング、羽目板を新たに開発し、これまで手がけてきた集成材事業に一層の弾みをつけた。同社はこれまで、中国遼寧省の大連東南工業有限公司と樺山木材工業の2工場と提携し、ヒバ集成土台の生産・販売を手がけてきた。このほど新たに能登ヒバでドアや内装材を開発・販売を開始することで、同社がこだわるヒバの製品群が拡充する形となる。
国産集成材月産1,000㎥
宮盛(秋田県南秋田郡、伊藤信悦社長)は月間7,000㎥を生産している。内訳は、Wウッド集成管柱5,500㎥(16万本)、国産集成材はハイブリッド平角も含め1,000㎥、その他Rウッド集成平角を含め500㎥となっている。
Wウッド集成管柱12万本
菱秋木材(秋田県能代市、秋元秀樹社長)の月間生産量は、Wウッド集成管柱12万本、Rウッド集成平角2,500~3,000㎥で推移している。この生産量は好調な時期も低調な時期も一定で、生産調整は一切行っていない。
赤字覚悟で杉集成管柱生産
二ツ井パネル(秋田県北秋田市、鈴木稔社長)の生産量は、Wウッド集成管柱が月産7万本と変わっていないが、化粧貼り集成材の生産量が月産800㎥と落ち込んでいる。首都圏での需要が落ち込んでいることが要因だ。杉集成管柱は、KDラミナやグリンラミナの入荷状況が、注文しても2~3ヶ月かかるような状況のため、今は少ししか生産していない。200㎥の乾燥機を持っているが、ラミナが入らなければ話にならない。管柱メーカーとして注文があればないとは言えず、赤字覚悟で生産している。
国産材ラミナ乾燥に最適
東北通商(秋田市、青木聡社長)が開発した中温大型乾燥機は、国産材ラミナ(桧、杉、カラ松など)の乾燥に適していると西日本を中心に評価が高く、問い合わせも増えている。大型中温乾燥機の容量は60~500㎥と幅が広く、用途に合わせてサイズを選べる。
工場や樹種に合う接着剤提案
オーシカ(東京都、宮本博社長)は、造作を含む構造用集成材向けの接着剤供給で大手に入る。構造用集成材製造のラミナ接着剤は、大断面向けの商品「ディアノール」シリーズ(JASF☆☆☆☆、レゾルシノール・フェノール恐縮合樹脂)や耐水性、速乾タイプの鹿印ピーアイボンド(水生高分子イソシアネート系)のほか、針葉樹向け、高比重材向けなど優れた商品がある。
HB好調、量産目指す
中国木材(広島県呉市、堀川保幸社長)の構造用集成材工場は伊万里工場(佐賀県伊万里市)と郷原工場(広島県呉市)。そして2012年に小・中断面、13年に大断面の鹿島工場(茨城県神栖市)が竣工した。
フル生産で月2,500㎥に
協和木材(東京都、佐川広興社長)は昨年後半から、集成材工場が24時間フル稼働となり、杉の集成管柱の月間生産量が2,500㎥まで拡大している。円安に伴う価格競争力の向上が背景にあり、競合するWウッドの相場の高止まりで現在もなお堅調な引き合いを保っている。ただ、住宅着工の反動減で総需要の減少が予想されることから今後は、昨年JAS認定を取得した桧の集成通し柱や至上開拓中のウッドALCの拡販に力を入れていく。通し柱は管柱の需要先に販売したい考えで、全体の10%程度(月間250㎥)の生産を目指す。
構造から羽柄、合板、内装まで
辻井木材(京都市、辻井重社長)が取り組んでいる京都府内産杉を原材料とした構造用集成材「ひなた」が、着実に市場認知度を高めている。昨年末には引き合い増に伴う製品在庫圧縮で、欠品寸前という状況だった。同社では「京都府内産材で木造住宅を建築する需要家の構造材選択肢が広がり、設計段階での指定を含め引き合いが増えている。横架構造用集成材、KD羽柄材、合板、内装仕上げ材と主要部材をすべて京都府内産材で供給する体制もできてきた」と語る。
非住宅物件の木造化支援
モッケン金物や集成材を利用したモッケンフレームを提供する木建技研(大阪府池田市、寺田久美子社長)は木造を得意とする設計事務所と連携し、プレカット工場に対して非住宅物件の木造化を支援する取り組みを始めた。そのため関東から九州まで11設計事務所との連携体制を構築しており、今後も協力事務所の拡大を進める。
細かな受注対応と納期順守
ハイテクウッド(秋田県山本郡、清水正博社長)の構造用集成材製造工場である能代港工場(能代市)は、構造用集成材月産4,500㎥、FJ及びソリッドの間柱等を2,000㎥、合計6,500㎥を製造している。12年に事業規模・生産体制を見直してスリム化し、この規模となった。
中断面の生産が拡大
櫻井(奈良県吉野郡、櫻井信孝社長)は、年間10万㎥に及ぶ構造用集成材を生産している。本社吉野工場では小断面を軸に、五條工場では中断面を生産している。他者との差別化という点では、創業以来の化粧貼り集成材柱や地元吉野材を利用した杉・桧集成材という強みもある。
米ヒバ、桧小断面の最大手
米ヒバ、桧小断面構造用集成材の製造最大手であるサイプレス・スナダヤ(愛媛県西条市、砂田和之社長)は今期、米ヒバ小断面構造用集成材で年間2万4,000㎥、桧小断面構造用集成材で1万8,000㎥、合計で4万2,000㎥を生産する。
国産桧の匠乾太郎EW
院庄林業(岡山県津山市、武本哲郎社長)は関連会社のインノショウフォレストリー(同)で構造用集成材を生産している。生産能力は、第1工場(小断面)、第2工場(中断面)、第3工場(受注生産)合わせて月間およそ1万5,000㎥。そのうち横架材用途が6割を占める。
最短3日の短納期が強み
STSテクノウッド(ロシア沿海州、ビフロフ・A・A社長)は年間伐採量120万㎥水準で安定する強固な資源背景を強みに、集成材生産事業を展開している。同社は住友商事とロシア・チェルネイレスの合弁企業で、エゾ松集成管柱を日本市場に供給する唯一の企業だ。
非住宅物件にも対応
FLT三重(三重県伊賀市、川崎信哉社長)は、三重県伊賀市にWウッド構造用集成材の在庫約1万5,000㎥を持つ。中部、関西、北陸などのプレカット工場にトレーラー単位から、バンドル、邸別アッセンブルなど様々な形で出荷している。最近は高齢者施設や幼稚園、保育園等の日住宅向けの引き合いも増えている。柱、梁、土台など910モジュールからメーターモジュールに対応した105、120㍉幅の製品をフル在庫で持っていることで、遠隔地からの注文も増えている。
白木でE150はカナダツガのみ
トランス・パシフィック・トレーディング(トラパ、東京都、茨木康雄社長)は、高強度構造用集成材が今後の日本市場におけるカナダ・BC州産米ツガ(=カナダツガ)の最も期待される需要分野になると位置付け、カナダツガ高強度構造用集成材製造に力を入れる大野製材所(兵庫県姫路市、大野義人社長)と連携して需要開拓に取り組んでいる。構造用集成材流通でも西濃木材(大阪市、西畑憲一社長)などと連携し、邸別納材を含め亜きめ細かい供給を推進していく。茨木社長は「E150強度を確保でき、しかも白木で美しく、白壁現し工法ニーズにも応えられる樹種としてカナダツガは最適。中・大規模木造建築物構造材向けに需要増が期待される」と語る。
KD、集成比率60%超す
木材保存処理大手のザイエンス(東京都、田中隆行社長)は、急速に進行する住宅土台のKD、集成材化に呼応、傘下工場でのOP防腐・防蟻処理構造材の生産体制を強化するとともに、昨年から北欧産Wウッド(スプルース)構造用集成材を原材料とした防腐・防蟻処理集成土台「OP修正スケヤースプルース(Wウッド)」(JASK3相当)の販売を開始、樹種選択肢を広げている。「OP防腐・防蟻処理Wウッド集成土台も大手住宅街車の標準採用で安定した生産出荷になってきた」(同社)と語る。
14年度は増産体制を強化
協同組合オホーツクウッドピア(OWP、北海道北見市、山田清理事長)は、道内でも特に公共物件や民間企業等の大型構造建築向けの大断面の構造用集成材の製造に長けている。また、小・中断面の構造用集成材生産にも地場産材を原料に積極的に利用するなど、地産地消を実践している
乾式防腐・防蟻処理集成土台を生産
下川町森林組合(北海道上川郡、山下邦廣組合長)は道内で唯一、乾式防腐・防蟻処理集成土台やロシア産ダフリカ・カラ松を使用した土台を生産している。同組合の販売する構造用集成材は、小・中断面の正角(柱、土台)や平角(梁)で、全量受注生産の体制を取るなど、小口対応可能な点が特徴だ。「住宅に必要な構造用集成材を特注で製造している。ロット単位の生産ではなく、1~2本の対応も行っている」(山下組合長)という。
集成材月産1万㎥体制へ
ウッティかわい(岩手県宮古市、澤田令社長)は現在、月間およそ7,000~8,000㎥の国産材集成材を生産している。7月末までに製材設備を一新し、8月から月間1万㎥にまで引き上げる。現状の集成材生産内訳は99%以上が国産材で、杉が60%、カラ松が35%、アカ松が5%。小断面は90%が10.5㌢角だが、最近では杉の中断面も増加しているという。
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